現在の日本のカウンセリングは、カールロジャースの来談者中心療法が広く使われています。相談に来た方の訴えをよく聞いて、来談者の求める援助を提供するということですが、これは、当たり前のことだと思われています。
しかし、来談者中心療法だけで、カウンセリングが出来るかというと、その答えはノーです。数ある他の両方と組み合わせて援助を提供するのです。
ですが、この組み合わせるということが、うまく出来ているカウンセラーが少ない現実があります。技法に囚われすぎて、自分の提供する技術に固執してしまいがちになります。
カウンセリングは、お話を聞くのはもちろん、その話から、何が問題なのか、その問題に来談者は本当に気づいているのか、そして、その問題に対して何をしてきて、何をしてこなかったのか。そういったことを総合的に判断し、何をしなければならいのかということに気づいてもらうことが必要です。
そのためにも、来談者の現状、そして目標(目的)をはっきりさせておくことが重要です。
英国で花開いたカウンセリング
英国では、この目標(目的)をはっきりさせるということは、カウンセリングでは、ほとんど必要ありません。なぜなら、小さい頃から自分の意見をしっかりもち、その意見を討論できる力、リベート力を養っているからです。この、リベート力は、目標(目的)を持つことと違う力だと思われていますが、実は非常に似ています。
例えば、自分の意見を相手に伝えようとしたとき、自分が言いたいこと、伝えたいことを、頭の中で整理して、出来るだけ短い言葉で伝えようとします。リベートが上手な人は、その言いたいことのポイントを端的な言葉に載せることがうまいのです。
日本では国民性の違いからこの自分の意見を相手に伝える力が十分に養われていないのが現状です。ですからカウンセリングでは来談者が何に悩んでいてどこが困っているのか、そして最終的にどのようになりたいのかを整理するところから始めなければなりません。
「英国式カウンセリングの技法」は、この「整理をすること」に非常に有効です。
自分の目標をシンプルに立てることが出き、その目標を達成するためのプロセスもシンプルに立てることが出来ると、目標を達成することがしやすくなります。
また、目標は、大きく分けて二つ設定する必要があります。
一つは、最終的な目標、もう一つは、その目標達成のために必要なステップ、行程にある小さな目の前の目標です。
目標をもっておられる方はたくさんおられます。しかし、その目標のためにしなければいけないこと、してはいけないことをしないための目の前の目標設定が出来なかったり、設定は出来ても、ステップで躓き、やる気を失ってしまったりと、最終目標すら見失ってしまっている方も多いのです。
それらを、「英国式カウンセリング」では、きっちりと寄り添い、来談者の「目標設定する力」、「ステップを乗り越える力」を養って、自分自身でコントロール出来るようにしていきます。
アメリカで発祥したカウンセリングという技術は、そういったことから、イギリスで「行動療法」と「認知療法」が融合された「認知行動療法」に発展し、「家族療法」のシステム統合理解などが深まり、より現場で有効なアプローチを可能にしています。
英国では国家を挙げてカウンセリングが行われている
英国では、アメリカ同様、カウンセリングの資格が国家資格になっており、その働く場所もほとんどのカウンセラーが、国の関係機関、大学の研究所など、公的な機関です。
それは、個々がまちまちにカウンセリング援助を行っていた場合、国としての国民の精神的な問題解決という課題を、どの部分、どのようなケースで、共有出来たり、共有できなかったりするということが判断できず、結局国民のためにならないという考え方が背景にあります。
症状、援助内容、そして回復プロセス。また、援助者の抱えている悩み、問題点も統計的に把握することによって、よりよい援助技術、援助者の育成につなげています。
結果、ブレア政権で行った施策が花を咲かせ、自殺者の激減という実績にもつながっているのです。
本学院では、皆さんが援助の中で、問題を抱えた来談者が、問題解決のための、「目標設定力」と「行動力」、「コントロールが出来る力」を養うことに、こだわり続けます。
そして援助者はどうあるべきかを追求し続けます。